透析治療は、腎臓の機能が低下した方にとって大切な治療法です。しかし「治療費が高額になるのでは…」と心配する方も多いでしょう。

そこで今回は、透析治療にかかる費用の全体像を把握し、どのような支援制度を利用できるのかを把握するための情報を解説します。

本記事の概要

  • 血液透析や腹膜透析の費用
  • 治療開始時にかかる初期費用
  • 費用負担を軽減できる医療費助成制度

この記事を読むと透析治療にかかる費用や、公的支援制度を確認できるので、安心して治療を始めるためにお役立てください。

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透析治療にかかる費用はどれくらい?

透析治療の主な種類は「血液透析」と「腹膜透析」です。どちらの治療法を選ぶかで、費用が異なります。また治療開始時にかかる初期費用と、継続的にかかる費用があります。

透析治療の費用は高額ですが、日本の医療保険制度や様々な公的な助成制度を使えば、自己負担額を軽減できます。

血液透析にかかる医療費

血液透析の費用は約40万円~50万円ですが、これは医療費総額であり、実際に窓口で支払う自己負担額は、加入している医療保険や後述の医療費助成制度によって軽減できます。

項目詳細
医療費総額
※1ヶ月あたりの目安
約40万円~50万円
※医療費総額。自己負担額は加入医療保険・医療費助成制度の適用により軽減される
含まれる費用(例)透析治療費、薬剤費、検査費用など
治療頻度週2~3回
※1回約4時間

血液透析にかかる医療費には、透析治療そのものにかかる費用に加え、透析に必要な薬剤費や検査費用などが含まれます。

腹膜透析にかかる医療費

腹膜透析にかかる医療費は血液透析と同様、1ヶ月あたり約40万円~50万円ですが、実際の自己負担額は医療保険や助成制度によって軽減されます。

項目腹膜透析
医療費総額
※1ヶ月あたりの目安
約40万円~50万円
※医療費総額。自己負担額は加入医療保険・医療費助成制度の適用により軽減される
含まれる費用(例)透析液・カテーテルなどの消耗品費
定期的な通院での診察費・検査費用など
治療頻度CAPD:1日数回手動での透析液交換
APD:夜間、機械を使って行う

腹膜透析は主に自宅で行う治療のため、状況によっては透析液など、必要な物品の配送費用がかかる可能性があります。

初期費用は?

透析治療を開始する際には、治療の種類に応じて初期費用がかかります。主な初期費用は、透析を始めるために必要な手術費用です。

透析の種類初期費用の内容費用の目安補足
血液透析血管を作る手術
※内シャント造設術など
約10~30万円手術の種類や医療機関によって異なる
腹膜透析腹腔内にカテーテルを留置する手術
自宅での機器設置費用
など
約10~30万円自宅での透析に必要な物(APD機器など)の設置や説明にかかる費用が含まれる場合あり

これらの初期費用についても、公的医療保険の適用により自己負担割合が定められています。さらに、高額療養費制度や後述する医療費助成制度を利用することで、自己負担額を軽減できます。実際に窓口で支払う金額は、これらの制度適用後の金額となる点を把握しておきましょう。

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年齢に応じた透析治療の費用と高齢者療養費制度について

日本の医療保険制度では、年齢によって医療費の自己負担割合が定められています。高齢者の自己負担割合は、現役並み所得があるかどうかによって異なります。

以下の表は、一般的な医療費の自己負担割合の例です。

年齢区分自己負担割合
0歳~小学校入学前2割
小学校入学~70歳未満3割
70歳~75歳未満2割
※現役並み所得者は3割
75歳以上1割
※現役並み所得者は3割

※70歳~75歳未満の方でも特例措置により1割負担となる可能性あり。

透析治療にかかる費用も、上記の自己負担割合に基づいて計算されます。例えば、小学校入学~70歳未満の方は、医療費総額の3割が自己負担額です。

透析治療は医療費が高額になるため、自己負担額が高額療養費制度や特定の医療費助成制度によって軽減されることがあります。特に、特定の病気(特定疾病)に該当する透析治療の場合、後述する特定疾病療養受療制度により、自己負担額に上限が設けられています。

高齢者の場合、自己負担割合が低いことに加え、高額療養費制度の所得区分によっては自己負担限度額がさらに低くなる場合があります。

透析治療に使える医療費助成制度

透析治療にかかる医療費は高額ですが、様々な医療費助成制度を利用すれば、自己負担額を軽減できます。ここでは、主な医療費助成制度を紹介します。

  • 特定疾病療養受療制度
  • 重度心身障害者医療費助成制度
  • 自立支援医療(更生・育成医療)
  • 指定難病医療費助成制度
  • 年金制度(障害年金)
  • 小児慢性特定疾患治療研究事業
  • 医療保険の長期高額疾病(特定疾病)
  • 自治体独自の助成制度

透析治療の費用負担を軽減できるかもしれないので、上記の医療費助成制度を順に見ていきましょう。

特定疾病療養受療制度

特定疾病療養受療制度は、高額な医療費が継続的にかかる特定の病気(特定疾病)について、医療費の自己負担額に上限を設ける制度です。人工腎臓(透析療法)を必要とする慢性腎不全は、この特定疾病に指定されています。

この制度を利用すると、医療機関ごとに1ヶ月あたりの自己負担額が1万円(所得によっては2万円)に軽減されます。健康保険から「特定疾病療養受療証」の交付を受け、医療機関の窓口で提示すると適用されます。特定疾病療養受療制度の対象者は、日本の公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)に加入している方です。

重度心身障害者医療費助成制度

重度心身障害者医療費助成制度は、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持つ方の医療費(自己負担額)を助成する制度です。透析を受ける方は、身体障害者手帳の交付対象になることがあるため、同制度を利用できるかもしれません。

助成内容は自治体によって異なりますが、医療費の自己負担分が全額助成されることがあり、自己負担限度額が設定される場合もあります。

重度心身障害者医療費助成制度の利用には、居住区域を管轄する市区町村に申請が必要です。所得制限がある場合や、他の医療費助成制度との併用について規定があるケースもあります。

自立支援医療(更生・育成医療)

自立支援医療制度は、心身の障害に関する医療費の自己負担額を軽減する制度です。透析治療に関連して利用できるものに、「更生医療」と「育成医療」があります。

種類対象者透析関連の対象医療
更生医療18歳以上の身体障害者手帳所持者人工腎臓に関する医療
※透析療法、腎移植後の抗免疫療法など
育成医療18歳未満の心身に障害がある児童人工腎臓に関する医療
※透析療法、腎移植後の抗免疫療法など

これらの制度を利用すると、医療費の自己負担額が原則1割に軽減され、さらに所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担上限額が設定されます。申請先は、居住区域を管轄する市区町村の障害福祉担当窓口です。

指定難病医療費助成制度

指定難病医療費助成制度は、国が定める指定難病にかかっている方の医療費負担を軽減する制度です。慢性腎不全の原因となる病気の中には、IgA腎症・多発性嚢胞腎など、指定難病に定められているものがあります。

指定難病と診断され、病状が基準を満たすと医療費助成の対象となり、医療費の自己負担割合が原則2割になり、所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担上限額が設定されます。

指定難病医療費助成制度の利用には、難病指定医の診断書を添えて、居住区域を管轄する都道府県または指定都市に申請が必要です。

年金制度(障害年金)

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障がある場合に受け取れる年金です。透析療法を受けている方は、障害年金の対象となる可能性があります。

障害等級は、透析の期間やその他の病状によって判定されます。人工透析療法を継続している場合、原則として障害等級2級に該当するとされています。

障害年金を受給できると、透析治療にかかる直接的な医療費を助成する制度とは異なりますが、経済的な支えとなり、医療費負担を含む生活全体の負担軽減につながるでしょう。

障害年金の申請は、加入している年金制度(国民年金または厚生年金)によって異なります。国民年金に加入している場合、居住区域を管轄する市区町村役場の国民年金担当窓口、厚生年金に加入している場合、お近くの年金事務所または勤務先の会社で申請可能です。

小児慢性特定疾患治療研究事業

小児慢性特定疾患治療研究事業は、国が定める小児慢性特定疾患にかかっている児童等(※)の医療費自己負担分を助成する制度です。
(※)原則18歳未満の方が対象。ただし状況によっては20歳未満まで認められる可能性あり。

腎疾患も対象疾患に含まれており、透析療法が必要な慢性腎不全の場合、同事業の対象となる可能性があります。対象の場合、医療費の自己負担割合が原則2割となり、さらに所得に応じた自己負担上限額が設定されます。申請先は居住区域を管轄する都道府県、または指定都市の担当窓口です。

医療保険の長期高額疾病(特定疾病)

公的制度の他にも、自身や家族が加入している生命保険や医療保険から、給付金や保険金を受け取れる場合があります。特に入院給付金や手術給付金、特定の疾病に対する特約が付加されている場合、透析導入のための入院や手術、あるいは透析治療そのものに対して給付金が支払われる可能性があります。

生命保険などに入っている場合、自身の保険証券を確認したり、加入している保険会社に問い合わせたりして、どのような保障が受けられるのかを確認するとよいでしょう。

自治体独自の助成制度

これまで紹介した国の制度や都道府県の制度に加え、市区町村が独自の医療費助成制度を設けている場合、透析治療などの負担を軽減できるかもしれません。

各自治体独自の制度では、国の制度や都道府県の制度では対象とならない医療費の一部を助成したり、自己負担額をさらに軽減したりすることがあります。

居住区域を管轄する自治体に独自の助成制度があるかどうかは、市区町村の担当窓口(福祉課・健康保険課など)で確認できる他、ホームページなどで情報提供しているケースもあります。

マル都医療券

マル都医療券は、東京都に住んでいる方が利用できる独自の医療費助成制度で、所定の条件に該当すると医療費の自己負担分を助成してもらえます。透析治療を受けている場合、人工腎臓にかかる医療について、同制度の対象となる可能性があります。

マル都医療券が適用されると、医療機関での自己負担額が軽減されます。詳細は、東京都の各区市町村の窓口や東京都福祉保健局のホームページで確認可能です。

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医療費助成制度の申請窓口・申請方法

ここまで様々な医療費助成制度を紹介しましたが、それぞれの制度によって申請窓口や申請方法が異なります。以下に、主な制度の申請窓口をまとめました。

制度名主な申請窓口
特定疾病療養受療制度加入中の公的医療保険の保険者
※健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険窓口など
重度心身障害者医療費助成制度居住区域を管轄する市区町村の障害福祉担当窓口
自立支援医療(更生・育成医療)居住区域を管轄する市区町村の障害福祉担当窓口
指定難病医療費助成制度居住区域を管轄する都道府県または指定都市の担当窓口
年金制度(障害年金)国民年金:居住区域を管轄する市区町村の国民年金担当窓口
厚生年金:年金事務所または勤務先
小児慢性特定疾患治療研究事業お住まいの都道府県または指定都市の担当窓口
自治体独自の助成制度お住まいの市区町村の担当窓口(福祉課、健康保険課など)
マル都医療券(東京都)東京都の各区市町村の窓口

申請には医師の診断書や意見書、所得証明書などの書類を求められることがあるので、事前に確認するとよいでしょう。また制度によっては申請期間が定められている場合もあるので、早めの手続きがおすすめです。

手続きに不安がある場合は各制度の申請窓口や、医療機関の相談窓口(医療ソーシャルワーカーなど)に相談してみましょう。

まとめ

透析治療には高額な医療費がかかりますが、日本の医療保険制度に加え、「特定疾病療養受療制度」をはじめとする様々な医療費助成制度を利用することで、自己負担額を軽減できる可能性があります。

これらの制度を組み合わせることで、医療費の自己負担上限額が1ヶ月あたり1万円になるケースもあるので、透析治療の費用について不安を感じている方は、自身の状況でどの制度が利用できるのかを確認してみましょう。

また身体障害者手帳の取得によって利用できる助成制度や障害年金などの経済支援の他、加入中の生命保険などからの給付金も確認すると、さらに負担を軽減できるかもしれません。安心して透析治療を受けるため、適切に助成制度を利用しましょう。

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※記事に関する個別のご質問には応じておりません。恐れ入りますが、ご了承ください。

※当記事の記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。