シャントイメージイラスト
監修医

戸田中央総合病院 腎センター長 兼 腎臓内科部長 井野 純

透析治療を検討する際に「シャント」を作る準備が必要と聞き、不安や疑問を抱く方は少なくありません。シャントとは一体何なのか、なぜ必要なのか、シャントを作る手術はどのような内容なのか、という方のため、今回は以下の内容を解説します。

  • 透析におけるシャントの基礎知識
  • 手術内容・入院スケジュール
  • 日常生活での管理方法
  • 起こりうる合併症・トラブル時の対処法

透析治療を安心して受けるため、シャントについて正しく理解していきましょう。

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透析のシャントとは?

透析治療、特に血液透析を行うためには、血液を体外のダイアライザー(人工腎臓)に送り、ダイアライザーで浄化された血液を体内に戻すための「血液の出入り口」が必要です。この出入り口のことを「バスキュラーアクセス」と呼び、その中でも一般的なバスキュラーアクセスが「シャント」です。

実際の血液透析の治療では、1回1回の透析のたびに、このシャントに2カ所針を刺し、一方から血液をダイアライザーへ、そしてもう一方にダイアライザーで浄化した血液を体に戻すことで、体内環境を整えることができるようになるのです。

シャントは、外科手術によって動脈と静脈を直接つなぎ合わせて作られます。通常、動脈は心臓から体の各部に血液を送る血管で、高い圧力で血液が流れています。一方、静脈は体の各部から心臓へ血液を戻す血管で、比較的低い圧力で血液が流れています。手術によって動脈と静脈をつなぐと、圧力の高いほうから低いほうに血液が流れる原理に従って、動脈の血流が静脈の血流に流れ込むことによって、静脈の血流量が増加します。この結果、シャントの静脈側の血管は、動脈の強い血流を受けて徐々に太くなり、血管の壁は厚くなり、透析毎に針を刺すことに耐えうる血管に成長します。また限られた治療時間内で十分な血液の浄化量を確保できるようになります。

このように動脈と静脈をつなぐシャントを、透析を始める事前の準備として作っておくことで、スムーズに血液透析を始めることができるのです。

動脈と静脈をつなぎ、静脈が太くなる様子を示す図

シャントの必要性

通常の末梢血管、例えば腕の表面にある静脈は、血流量が少なく血管の壁も薄いため、血液透析で効率的に血液を浄化するために必要とされる毎分150~300mLほどの血流量をダイアライザーに送れません。また何度も細くて壁の薄い静脈に針を刺すと、血管が傷つき、硬くなったり、詰まったりしやすくなります。

しかしシャントを作れば、前述のように人工的に静脈への血流量が多くなるため、血液浄化に十分な血液処理量を確保でき、また穿刺に耐える太くて丈夫な静脈=シャント血管としての機能を獲得することができます。このシャントを使うことによって、安全かつ効率的に血液透析ができるようになります。

バスキュラーアクセスの種類

シャントはバスキュラーアクセスの代表格ですが、実はシャントを含めたバスキュラーアクセスには、主に以下の4種類があります。

それぞれの手術内容を知ると治療法への理解が深まり、医師との相談もスムーズになるので、ここからは上記4種類のバスキュラーアクセスの詳細を見ていきましょう。

①自己血管内シャント 

自己血管内シャントは、自前の動脈と静脈をつなぎ合わせることで、動脈の血流が静脈に流れるようにした血管のことです。生体の自己血管を使用するため、感染や閉塞などのリスクが他の方法よりも低いため、心臓の機能に問題がない場合、最初に選ばれる種類となります。事実日本で作られるバスキュラーアクセスの9割が自己血管内シャントです。

シャント手術は1~2時間程度で、局所麻酔で行います。日帰り手術または1泊入院など施設によって異なりますので、お問い合わせください。

手術後、皮膚の上からシャントに耳を当てると、動脈血が流れ込んでいる静脈内の血流の音が「ザーザー」と聞こえます。指で探るとブルブルした血流の流れ(これをスリルといいます)を感じることができます。毎日シャントの音を確認し、いつもと違う(音が弱い、音がしないなど)と感じたら、医師や看護師へご相談ください。

自己血管内シャントを示す図

②人工血管内シャント

自己血管が細いなど、血管の状態によりご自身の血管で内シャントがつくれない場合は、人工血管を使用します。人工血管を自己動脈と自己静脈に吻合すると、人工血管の内部を血液が流れるようになるので、皮膚の表面から2カ所人工血管に針を刺して、自己血管内シャントと同様に透析のための血液の出入り口として使用するのです。

人工血管は、体にとって“異物”なため、感染のリスクがあり、また自己血管との吻合部に血栓を作りやすいため、日本ではバスキュラーアクセス全体の約7%程度の頻度にとどまっています。

手術の時間や入院の必要性については、自己血管内シャント同様、各施設によって異なりますので、お問い合わせください。

人工血管内シャントを示す図

③動脈表在化 

特に心臓の機能が低下している場合には、シャントの強い血流が心臓に流れ込み、心臓の負担となる可能性があるため、シャント作成を避け、動脈表在化という手術をすることがあります。これは、シャントのように血管同士を吻合せずに、腕の深いところを流れる動脈を皮膚のすぐ下の浅い場所に持ち上げて固定する方法で、透析時には表在化した動脈に針を刺して透析での十分な血流を確保する方法です。

最大のメリットは心臓への負担がほとんどないということ、逆にデメリットは、透析のたびに動脈に直接針を刺しているので、針を抜いた後の止血に時間がかかることが挙げられます。

また、表在化した動脈に針を刺して、動脈から得られる十分な血液をダイアライザーに送ることは可能となりますが、浄化された血液を体に戻すための自己静脈への穿刺が必要となるため、動脈表在化の手術を行う前提として、あらかじめしっかりとした自己静脈があることの確認が必要となります。

局所麻酔をして1時間程度の手術となりますが、これも施設による違いがあるので、治療する医療機関でご確認ください。

動脈表在化を示す図

④透析用カテーテル

①~③の方法は、それぞれ、①自己血管同士をつなぐ、②人工血管を自己血管につなぐ、③浄化した後の血液を体に返すための自己血管(静脈)が確保されている、といった、自己血管の状態・使用に問題がないことが前提となります。

逆に言えば、自己血管が①~③のいずれの手術にも耐える前提を満たさない場合(自己血管が極端に細い、閉塞している、荒廃している)、カテーテルと呼ばれるシリコンやポリウレタンなど、丈夫かつしなやかな素材で作られた細い管を体に埋め込む必要があります。

バスキュラーアクセスとしての役割を果たすために、カテーテルを首の皮下を通る内頸静脈という血管から挿入し、カテーテルの先端を心臓の近くに置くことで、ある程度の血流が確保できるようになるのです。

最大の特徴は、カテーテルの途中にカフと呼ばれるフェルト状の構造物がカテーテルの周りを取り巻いていることです。カフはほんの1㎝程度の長さですが、カテーテル留置後数週間でカフに自己組織がくっつき(癒着)、ある程度引っ張っても簡単には抜けづらくなります。

また、人工物であるカテーテルの最大の敵である感染症は、カテーテルの出口部から皮膚の表面に住んでいる細菌群が体内に侵入して起こることが多いのですが、このカフの存在によって、細菌群の侵入を防ぐことができるのです。。

挿入方法は、局所麻酔をしながら、エコーのガイド下にカテーテルを内頸静脈に挿入、内頸静脈から5-10㎝離れた場所に皮膚の出口部を作成して、カテーテルを留置します。約1~2時間程度の手術となります。

透析用カテーテルを示す図

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バスキュラーアクセス手術の流れ

手術の流れは、病院や患者さんの状態によって多少異なりますが、一般的には以下のようなステップで進められます。

診察と検査

バスキュラーアクセス手術が必要と診断された後、医師による診察と血管の状態を詳しく調べるための検査が行われます。超音波検査や造影検査などを行い、バスキュラーアクセス作成に適した血管を見つけます。

手術計画の説明と同意

医師からバスキュラーアクセスの種類(自己血管、人工血管など)、手術の方法、合併症のリスク、手術後の管理などについて説明があります。内容を十分に理解していただいた上で、同意書に署名していただきます。

手術

手術日には、準備を整えて手術室に入ります。多くの場合、局所麻酔で行われます。手術時間は通常1~2時間程度です。

術後管理

手術後は、バスキュラーアクセスが正常に機能しているか(シャント音やスリルの確認、腫れや痛みの有無など)を注意深く観察します。必要に応じて、超音波検査などで確認することもあります。

透析開始

作成したバスキュラーアクセスが十分に成熟し、透析に耐えうる血管になったらバスキュラーアクセスに針を刺して透析を開始します。通常、自己血管シャントの場合は血管が発達するまで手術後数週間から数ヶ月間、人工血管シャントの場合は手術創部周囲の腫れが引くまでの間、バスキュラーアクセスとしての使用を控える必要がありますが、カテーテルの場合は挿入後比較的早くから使用可能です。

手術に対する不安を軽減したり、心の準備をしたりするため、流れを把握しておきましょう。

バスキュラーアクセス手術で入院が必要な場合

バスキュラーアクセス手術を受けるにあたり、以下の事情により入院が必要となる場合があります。

  • 人工血管を使用する場合や、足にバスキュラーアクセスを作成する場合
  • 高齢の方や事前に出血傾向があると分かっている方
  • 術後すぐに閉塞や出血のトラブルが起きた場合
  • 透析の開始時に合わせて手術が必要な場合

いずれも入院での経過観察が必要と判断された場合に、入院していただくことがあります。

入院期間は手術の種類や患者さんの状態、施設の方針によって異なりますので、治療を受ける医療機関でご確認ください。

バスキュラーアクセスの管理と注意点

バスキュラーアクセスは透析治療を継続するために大切な「生命線」であるため、バスキュラーアクセスを長持ちさせ、トラブルを防ぐためには、日々の適切な管理と注意が必要です。

そこで、ここからは日常生活での注意点やトラブルのサイン、定期的なケアの重要性などを、日本で9割選択されている自己血管内シャント(ここでは、単にシャントと呼ばせていただきます)についてお伝えします。

日常生活での注意事項

シャントは透析を続けていくうえで必要不可欠です。シャントを長持ちさせるために、シャントの閉塞や感染などを予防しましょう。

シャントトラブルのサイン

シャントに異常がないかを早期に発見することは、深刻なトラブルを防ぐために重要です。日頃からシャントの状態を観察し、以下のようなサインがないか確認しましょう。これらのサインに気づいたら、速やかにクリニックや病院に連絡することが大切です。

サインの種類具体的な症状
血流の異常シャント音がいつもより弱い、または聞こえない。シャントの振動(スリル)が弱い、または感じられない。
見た目の変化シャント部分が腫れている、赤くなっている、熱を持っている。シャント血管が硬くなっている。
感覚の異常シャント部分に軽い痛みや違和感がある。シャント側の手や指が冷たい、しびれる、色が悪くなる(スティール現象の可能性)。シャント側の腕全体が腫れて痛む(静脈高血圧症の可能性)。
感染の兆候シャント部分の強い痛み、熱感、赤み、腫れ。シャントの針穴や血管に沿って膿が出ている。全身の熱(発熱)。

これらのサインは、シャントの狭窄や閉塞、感染などのトラブルを示している可能性があります。特にシャント音やスリルが確認できない場合は、シャントが詰まっている可能性が高く、緊急の対応が必要となることがあります。

定期的なケアの重要性

日々の自己チェックに加えて、医療機関での定期的なシャントのチェックも大切です。透析施設では、透析治療のたびにシャントの状態を観察していますが、それ以外にも定期的な超音波検査などでシャント血管の内部の状態を確認することが推奨されます。

定期的な検査によって、まだ症状や不具合が出ていない初期の血管の狭い箇所(狭窄)なども発見することができます。早期に発見できれば、シャント血管狭窄部分を広げる治療(PTAなど)によってシャントの機能を維持できる可能性が高まります。トラブルが進行して完全に閉塞してからでは、治療が難しくなったり、シャントを作り直す必要が出てきたりすることもあるため、定期的にチェックをしましょう。

通院透析施設との情報共有の重要性

シャントの管理においては、患者自身の日々の観察のみならず、透析施設のスタッフとの情報共有も重要です。そのため、シャントに関する異常を感じた場合は、まずは透析施設に連絡し、早期の受診や検査などの対応が必要かどうかの判断を仰いでください。

特に、患者毎にシャントトラブルのリスクが違いますので、これまでの合併症や治療薬などの情報が集まっている通院透析施設との情報共有によって、より包括的な治療を受けることができる可能性が高くなると考えられます。また一見シャントに関連しない体調の変化でも、それがシャントに影響を与える可能性もあるため、自己判断せず通院透析施設に相談することが大切です。

透析終了後の止血バンドはいつはがすべきか

透析治療が終わると、シャントに刺した針を抜いた後、出血を防ぐために止血バンドやテープなどの止血材で圧迫止血を行います。この止血材を外すタイミングは、一般的に透析終了後、医師や看護師から指示された時間(例えば30分~1時間後など)が経過してからです。止血バンを外すタイミングを間違えることには、以下のリスクがあります。

外すタイミングリスク
早すぎる場合再び出血するリスクがあります。
遅すぎる場合シャントの血流を妨げ、血栓ができやすく、またシャント血管が閉塞する可能性があります。

指示された時間を守り、止血材を外した後も、出血がないか、シャントの音やスリルに異常がないかなどを確認することが大切です。もし出血が続く場合は、すぐ透析施設に連絡しましょう。

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手術の合併症について

シャント手術後に起こりうる合併症には、以下のようなものがあります。

  • 局所の腫れ・痛み
  • 感染症
  • 出血
  • 早期のシャント閉鎖
  • スティール現象
  • シャント肢静脈高血圧症
  • 麻酔剤などの薬剤アレルギー

シャント手術は安全に行われますが、どのような手術にも合併症のリスクは存在します。早期発見と適切な対処につなげられるよう、シャント手術に関する合併症を確認していきましょう。

局所の腫れ・痛み

手術した部分に腫れや痛みが生じることは、手術後の一般的な反応です。通常は時間とともに改善しますが、痛みが強い場合や、腫れが広がる場合は、感染や血腫(血の塊)ができている可能性も考えられます。

感染症

シャント血管や手術部位が細菌に感染することがあります。特に人工血管や透析用カテーテルなどの人工医療機器を体内に留置する場合は、感染のリスクが高まります。

シャント感染症を疑うべき症状は、以下の通りです。

  • 手術した部分が赤く腫れる
  • 強い痛みや熱感が生じる
  • (特に透析開始後)血管に沿って赤く腫れる、透析で穿刺した針穴から膿が出る

なおシャント感染症の処置が遅れると、以下ののようなリスクがあります。

  • 感染による炎症や腫れによってシャントが閉塞する
  • シャント血管が破裂して大出血を引き起こす
  • 全身に菌が回って重症な感染症(敗血症)になる

感染症が疑われる場合は、まず抗生物質による治療が必要です。

抗生物質による治療と同時に、自己血管シャントの感染では、感染した部分の切除および新たなシャントの作成や、人工血管シャントの感染では、人工血管の一部または全部の摘出・交換が必要となることがあります。

出血

手術直後に手術部位から出血したり、血腫(血の塊)ができたりすることがあります。また、手術の合併症そのものではありませんが、透析で穿刺した針穴からの出血が止まりにくかったり、シャント瘤(血管の一部がコブのように膨らんだもの)が破裂して大量出血を起こしたりするリスクもゼロではありません。

出血が続く場合や、急にシャント部分が大きく腫れて痛む場合は、血腫ができている可能性も考えられます。少量であれば自然に吸収されるため様子を見ることもありますが、大きい場合や増大する場合は、圧迫止血や再手術が必要になる可能性があります。

早期のシャント閉鎖

シャント手術後比較的早期にシャントに十分な血液が流れないことがあります。以下の要因から、多くは血栓という血液の塊がシャントの流れをせき止めてしまい、場合によっては、術後早期に閉塞にいたることもあります。

  • 自己静脈が細い・閉塞している
  • 動脈の血流が弱い
  • 血栓ができやすい病態や遺伝的な背景がある
    など

シャントが閉塞すると、シャント音やスリルが消失します。早期に発見できれば、カテーテルを使った血栓除去術、あるいは外科的な修復術によって再び開通できる可能性もありますが、時間が経つと治療が難しくなり、新たなシャントを作る必要が生じます。

シャント血管が閉塞している様子を示す図

スティール現象

厳密には術後の合併症ではなく、シャントを作ったのち、いつでも起こり得るシャントトラブルです。シャント作成において動脈と静脈を吻合すると、動脈の強い血流静脈に流れ込むようになります。この静脈に流れ込む血流が過剰に多い場合、本来手や指に流れるはずだった動脈の血液が不足することで、以下の症状が、シャント側の手や指に現れることがあります。これを、スティール現象(またはスチール症候群)と呼びます。

  • 冷感
  • しびれ
  • 痛み
  • 色が悪くなる(紫色や黒くなる)
  • 重症の場合は指先の壊死

症状が軽ければ経過観察で良い場合もありますが、重症の場合はシャントの血流量を減らす手術や、場合によっては、シャントを閉鎖する処置が必要になることもあります。

スティール現象により指先の色が悪くなっている様子を示す図

シャント肢静脈高血圧症

これも術後に特に起こりやすい合併症ではなく、シャントを作ったのち、いつでも起こり得るシャントトラブルです。シャント肢静脈高血圧症は、何らかの原因で心臓に向かうはずのシャント血流が、シャントよりも末梢側にうっ滞して起こる、以下のような様々な症状を来す症候群です。す。

  • 腕全体が腫れる
  • だるさ
  • 痛み

症状が進行すると、以下のような状態になることもあります。

  • 皮膚の色素沈着
  • 潰瘍ができる

シャント血流が心臓に向かって進むことができなくなる原因としては、心臓までの間のシャント血管や心臓に近い中心静脈に狭窄や閉塞がある場合や、シャント血管が狭くなくてもシャント血流が過剰に多いことによって相対的なシャント血流のうっ滞をきたす場合などがあります。

治療方法は、狭窄部の血管拡張術(PTA)や、手術によってシャント過剰血流を解除する処置などです。

麻酔剤などの薬剤アレルギー

手術中に使用される局所麻酔薬やその他の薬剤に対して、アレルギー反応を起こす可能性がごく稀にあります。アレルギー反応の症状は、以下のように様々です。

  • 発疹
  • 痒み
  • 呼吸困難
  • 血圧低下などの重篤なアナフィラキシーショック

既往にアレルギーがある場合は、事前に医師や看護師に必ず伝えるようにしてください。手術中は、アレルギー反応が起きた場合に備えて、医療スタッフが注意深く観察し、迅速に対応できる体制を整えています。

トラブル発生時の初期対処法

シャントは日々の透析を支える重要な血管ですが、残念ながらトラブルが起こる可能性はゼロではありません。シャントトラブルに遭遇した場合、まず最初にどのように対処すれば良いのかを知っておくことは、シャントを守り、安定した透析を継続するために非常に重要です。そこでシャントトラブルが発生した場合の初期の対処法を解説します。

シャントのトラブルは、シャントの閉塞、狭窄、感染、出血などが挙げられます。これらのトラブルが疑われる症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡することが最も重要です。自己判断で様子を見たり、不適切な処置を行ったりすると、かえって状態を悪化させる可能性があります。

出血したら、とにかく圧迫

シャント部から出血した場合、まずは清潔なガーゼや布で出血している部分をしっかりと圧迫止血しましょう。心臓より高い位置にシャント側の腕を上げると、止血効果が高まります。圧迫を緩めたり、自己判断で処置を中断したりしないよう注意が必要です。

しばらく圧迫しても血が止まらない場合や、出血量が多い場合は、すぐに透析施設または救急外来に連絡しましょう。透析終了後の針穴からの出血が止まりにくい場合も同様に、適切な圧迫を行い、必要であれば医療機関に連絡しましょう。

透析を始めていなくても、シャントが詰まってしまうこともある

「まだ透析は始まっていないから大丈夫」と思われがちですが、シャントは作成後、透析に使用する前から詰まる(早期閉鎖)ことがあります。シャントが詰まる原因は、作成直後の血栓形成や血管の圧迫などです。

透析の開始前にシャントが詰まると、透析を開始する際に緊急で新たなバスキュラーアクセスを作成する必要が生じたり、透析開始が遅れたりする可能性があります。そのため、透析開始時期に関わらず、シャント作成後は毎日シャント音やスリルを確認し、異常がないかをチェックすることが大切です。

シャント音やスリルが感じられない、または弱くなったと感じたら、すぐに手術を受けた病院や透析予定の施設に連絡しましょう。早期に発見できれば、血栓を取り除く処置などでシャントを再びいつでも使えるような状態に戻せる可能性があります。

まとめ

シャントトラブルの予防のためにできること

  • 毎日の自己チェック: シャント音(ザーザーという音)とスリル(ブルブルいう細かい振動)を毎日朝夕など決まった時間に確認する習慣をつけましょう。シャント音やスリルが弱くなったり、なくなったりしていないか、シャント部分に腫れ、赤み、熱感、痛みがないかなどを目で見て、手で触って確認します。
  • シャント側の腕の保護: シャント側の腕を圧迫したり、傷つけたりしないように注意します。重いものを持たない、きつい服を着ない、腕時計をしない、シャント側を下にして寝ない、シャント側で血圧測定や採血をしない、といった基本的な注意点を守りましょう。
  • 清潔の保持: シャント部分は常に清潔に保ちましょう。透析後の針穴のケアは、感染予防のために特に重要です。施設の指示に従って適切に行いましょう。
  • 適度な運動: シャント側の腕の血行を良くするために、医師や看護師の許可のもと、適度な手指や腕の運動を行いましょう。ただし、シャントに負担がかかるような激しい運動は避けてください。
  • 定期的な医療機関でのチェック: 透析施設での日常的な観察に加え、定期的にシャントの専門医による診察や超音波検査などを受けましょう。自覚症状がない初期の狭窄なども発見でき、早期治療・長期のシャント開存に繋がります。
  • 体調管理: 全身の状態はシャントにも影響を与えます。血圧や血糖値のコントロール、水分管理などを適切に行い、良好な全身状態を保つことがシャントの開存にも繋がります。

シャントトラブルは、適切なケアと注意によってそのリスクを減らすことが可能です。日々の生活の中でシャントを大切に扱い、異常の早期発見に努めれば、シャントを長持ちさせ、安定した透析治療を継続しやすくなります。

シャントは透析に必要な「生命線」であり、自己血管や人工血管で作成されます。日々のシャント音やスリルの確認の他、シャント側の腕の保護などのケアをすることで、シャントを長持ちさせ、トラブルを防ぐことができます。狭窄・閉塞・感染などの代表的な合併症やトラブルのサインを見逃さないようにしましょう

本記事の内容を参考にして毎日のシャントのセルフチェックを継続すれば、異常の早期発見が可能です。不安や疑問は抱え込まず、医師や看護師に積極的に相談しましょう。定期的な医療機関でのチェックも忘れず受け、シャントを適切に管理することで、安心して透析治療を続けられます。

監修医師

戸田中央総合病院
腎センター長 兼 腎臓内科部長

井野 純先生

  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本透析医学会専門医・指導医
  • 日本腎臓学会専門医・指導医
  • 日本腎臓リハビリテーション学会腎臓リハビリテーション指導士
  • 日本腎代替療法医療専門職推進委員会腎代替療法専門指導士
  • 多発性嚢胞腎協会PKD認定医
  • 医学博士

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