監修医

戸田中央総合病院 腎センター長 兼 腎臓内科部長 井野 純

腎臓の働きが低下し、透析治療の必要があると診断されたとき、多くの方が迷うのが「どの透析方法を選ぶべきか」という点ではないでしょうか。

透析治療には血液透析と腹膜透析の2種類があり、それぞれ治療の仕組みや通院頻度、生活への影響が異なります。

本記事では、血液透析と腹膜透析の基本的な仕組みや種類、メリット・デメリットを比較しながら、どちらの方法が自分に合っているのかを判断するためのポイントをわかりやすく解説します。

透析治療を始める前に、ぜひ参考にしてください。

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透析治療の2つの種類

透析には大きく分けて血液透析と腹膜透析の2種類があります。

どちらも失われた腎臓の機能を代替し、体の中の不要な物質(老廃物)や余分な水分の除去を行うという点で目的は同じですが、治療の方法や通院頻度、生活への影響が異なります。

また、どちらの方法にもメリットとデメリットがあり、生活スタイルや健康状態、自己管理のしやすさによって向き不向きが変わります。

以下では、それぞれの仕組みや特徴を詳しく見ていきましょう。

血液透析

血液透析は、日本で最も普及している透析方法で、全透析患者の約97%1)が選択しているといわれます。

週に3回、1回あたり4〜5時間程度、医療機関に通って行うのが現在の標準治療です。

血液透析は、専門スタッフの管理下で、患者ごとに細かく設定した治療を行うため、治療によって得られる効果を一定化・標準化しやすく、透析日と透析日の間の体内環境の大きな変化にも決まった治療効果を発揮させることができるという特徴があります。

一方で、定期的な通院が必要となるため、時間的な拘束は避けられません。

ここからは、血液透析の仕組みや種類について詳しく見ていきましょう。

血液透析の仕組み

血液透析は、血液を人工的に腎臓の機能を持たせた機械に流すことで浄化し、元々腎臓が行っていた機能を代替するという仕組みです。

事前に手術によって、主に腕の動脈と静脈を結んだ血管(シャント血管)を作っておき、透析の際にこのシャント血管に針を刺すことによって、体外に血液を取り出して透析装置の血液ろ過フィルター(ダイアライザー)に一定時間(4-5時間)通します。

そして、このダイアライザーが腎臓の代わりとなり、血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、浄化された血液を体に戻すのです。

これにより、本来腎臓が担っている以下のような役割を代替することが可能です。

  • 尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物除去
  • 余分な水分の除去
  • 血液中の電解質バランス(ナトリウム、カリウムなど)の調整

血液透析の種類

血液透析には、治療時間や回数、方法の違いによっていくつかのバリエーションがあります。

血液透析の主な種類は以下のとおりです。

血液透析の種類特徴
血液透析ダイアライザーで拡散と呼ばれる原理を用い、老廃物の除去を行う従来型の治療方法。大きいサイズの老廃物の除去効率に劣るため、現在は血液ろ過透析に治療の主流の座を譲っている。
血液ろ過ダイアライザーで体内の水分を大量の除去(ろ過)する原理を用い、水に溶けている老廃物を大量に除去する治療方法。大きいサイズの老廃物の除去効率は高いが、小さい老廃物の除去効率に劣るため、ほとんど行われていない。
血液ろ過透析血液透析と血液ろ過を組み合わせた進化系の治療法で、小さなものから大きなものまで様々な大きさの老廃物の除去に優れているため、現在最もポピュラーな治療方法となっている。
オーバーナイト透析夜間に寝ている間(約7〜8時間)に透析を行う方法。現在の標準治療に比べ老廃物の除去量が大きいため、疲労感や貧血の改善効果が見込まれ、また日中の活動時間を確保できるが、対応施設は限られる。
頻回透析週4〜6回に分けて行う方法。1回あたりの透析治療による負担を減らし、血圧や体重管理がしやすくなる。頻回の通院により時間が拘束されるため、実際は在宅透析で行われることが多い。
在宅透析自宅に透析装置を設置し、シャントの穿刺から透析装置の操作まで、患者や家族自身が行う方法。通院負担を減らせ、頻回透析や長時間の透析などによる治療効果が期待できるが、自己管理や家族などの介助者が必要である。またサポートする対応医療機関が限られる。
血液透析ダイアライザーで拡散と呼ばれる原理を用い、老廃物の除去を行う従来型の治療方法。大きいサイズの老廃物の除去効率に劣るため、現在は血液ろ過透析に治療の主流の座を譲っている。
血液ろ過ダイアライザーで体内の水分を大量の除去(ろ過)する原理を用い、水に溶けている老廃物を大量に除去する治療方法。大きいサイズの老廃物の除去効率は高いが、小さい老廃物の除去効率に劣るため、ほとんど行われていない。
血液ろ過透析血液透析と血液ろ過を組み合わせた進化系の治療法で、小さなものから大きなものまで様々な大きさの老廃物の除去に優れているため、現在最もポピュラーな治療方法となっている。
オーバーナイト透析夜間に寝ている間(約7〜8時間)に透析を行う方法。現在の標準治療に比べ老廃物の除去量が大きいため、疲労感や貧血の改善効果が見込まれ、また日中の活動時間を確保できるが、対応施設は限られる。
頻回透析週4〜6回に分けて行う方法。1回あたりの透析治療による負担を減らし、血圧や体重管理がしやすくなる。頻回の通院により時間が拘束されるため、実際は在宅透析で行われることが多い。
在宅透析自宅に透析装置を設置し、シャントの穿刺から透析装置の操作まで、患者や家族自身が行う方法。通院負担を減らせ、頻回透析や長時間の透析などによる治療効果が期待できるが、自己管理や家族などの介助者が必要である。またサポートする対応医療機関が限られる。

それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、医師と相談しながら自分に合った透析スタイルを選ぶことが大切です。

血液透析のメリット

血液透析には、医療機関で専門スタッフの管理下で行うことによる安心感や、機械設定による一定の治療効果といった利点があります。

主なメリットは以下のとおりです。

  • 一定の老廃物・水分除去が可能
  • 医療スタッフによる管理下で治療を受けられる
  • 自己管理の負担が少ない

これらの特徴から、初めて透析治療を受ける方や、自己管理に不安がある方には血液透析が選ばれるケースが多くなっています。

血液透析のデメリット

血液透析は安定した治療効果が得られる一方で、生活面や体への負担という点で以下のようなデメリットもあります。

  • 週3回、1回4〜5時間と通院頻度が高く拘束時間が長い
  • 食事・水分制限が必要
  • 透析後に倦怠感や低血圧などの症状が出ることがある
  • 心臓や血管への負担となることがあるがある

これらのデメリットも含めて理解したうえで、自分の生活スタイルに合うかどうかを検討することが重要です。

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腹膜透析

腹膜透析は、自分の腹部臓器を包んでいる腹膜という生体のフィルターを利用して、老廃物や余分な水分を除去する方法です。

日本における腹膜透析の占める割合は、透析患者全体の約3%1)であり、血液透析に比べると少数派ですが、自宅で治療を行えるため、時間や場所の自由度が高いのが特徴です。

また、基本的な通院頻度が月1回で済むため、仕事や家事との両立がしやすいというメリットがあります。

一方で、自宅で使用する透析液や器具の管理、感染症予防など、患者自身や家族によるセルフケアが必要とされてきました。近年、自己管理が難しい高齢者に対しても、自宅での腹膜透析治療を支援するために、訪問診療・看護師による在宅支援のネットワークの構築が各地で進んできています。

以下では、腹膜透析の仕組みや種類、メリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

腹膜透析の仕組み

腹膜透析は、お腹の臓器を覆っている腹膜を、血液をろ過するフィルターとして利用する治療法です。

患者のお腹 (腹腔) にあらかじめカテーテルを外科的手術によって留置し、そのカテーテルを通して透析液を腹腔内に注入します。

透析液が腹腔に入ると、腹膜に密に分布する毛細血管を流れる血液中の老廃物や余分な水分が腹膜を通して透析液側に移動します。

そして、一定時間 (2-8時間) 経過後、カテーテルを通して今度は腹腔に貯めておいた透析液を排出します。

この工程を1サイクルとして、1日に数サイクルの入れ替えを、基本的には連日繰り返すことで、腎臓が元々担っていた老廃物除去や水分調整など、体内環境を一定に保つ役割を代替することが可能となります。

腹膜透析の種類

腹膜透析には、透析液の交換方法や行う時間帯によって以下のような種類があります。

腹膜透析の種類特徴
CAPD(連続携行式腹膜透析)1日4回程度、手作業で透析液を交換する方法。昼間も交換が必要だが、自動腹膜透析装置を使わないため、清潔環境下の外出先でも実施可能。
APD(自動腹膜透析)透析液の注液と排液を自動で行う専用の機械を使って、主に就寝時を中心とした夜間に治療を行う方法。就寝中に透析が進むため、日中の自由時間を確保しやすい。
ハイブリッド透析腹膜透析と血液透析を組み合わせる方法。腹膜透析だけでは体内環境の調整が難しい場合、腹膜透析を週5-6回、血液透析を週1回行うことで、体内環境の調整を行う治療法。
CAPD(連続携行式腹膜透析)1日4回程度、手作業で透析液を交換する方法。昼間も交換が必要だが、自動腹膜透析装置を使わないため、清潔環境下の外出先でも実施可能。
APD(自動腹膜透析)透析液の注液と排液を自動で行う専用の機械を使って、主に就寝時を中心とした夜間に治療を行う方法。就寝中に透析が進むため、日中の自由時間を確保しやすい。
ハイブリッド透析腹膜透析と血液透析を組み合わせる方法。腹膜透析だけでは体内環境の調整が難しい場合、腹膜透析を週5-6回、血液透析を週1回行うことで、体内環境の調整を行う治療法。

それぞれの方法にメリットと注意点があるため、生活リズム・仕事や家庭の事情・健康状態を踏まえて医師と相談しながら決定します。

腹膜透析のメリット

腹膜透析には、自宅で行えることによる自由度や身体への負担が軽いなど、さまざまな利点があります。主なメリットは以下のとおりです。

  • 基本的な外来通院頻度が月1と少ない
  • 自宅や外出先でも実施可能 (清潔条件下に限る)
  • 連日ゆっくり透析が行われることで、血圧が安定し、心臓など体への負担が少なくなると言われている
  • 食事や水分制限が比較的ゆるやか
  • 血液透析で使用するシャント血管の手術が不要

これらの特徴から、日常生活の自由度を保ちたい方や、元々心機能が悪く、血液透析では心臓の負担が大きすぎることが予想される方に向いている治療法といえます。

腹膜透析のデメリット

腹膜透析は自由度の高い治療法ですが、自宅で行うからこそ以下のように注意すべき点もあります。

  • 基本的に週に6-7回、自己管理や家族・訪問看護のサポートの元に治療を行う必要があるある
  • 腹膜炎など腹膜透析特有の感染症リスクがある
  • 腹部にカテーテルを留置する手術を受ける必要がある

これらの点を理解したうえで、日常生活や健康状態に適しているかどうかを医師と十分に話し合うことが大切です。

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血液透析と腹膜透析の違いを比較

以下では、ここまで解説した血液透析と腹膜透析の違いを一覧でまとめました。

治療場所血液を身体の医療機関
治療頻度・時間週3回、1回4〜5時間(在宅透析やオーバーナイト透析もあり)
管理方法医療スタッフによる透析治療管理
患者自身による薬剤・食事管理
通院頻度週3回が標準的
向いている人医療機関への高頻度の通院が可能な人
項目血液透析腹膜透析
治療場所医療機関自宅(外出先でも可能)
治療頻度・時間週3回、1回4〜5時間(在宅透析やオーバーナイト透析もあり)毎日(CAPDは1日4回程度、APDは夜間を中心に1~4回程度の透析液の交換が必要)
管理方法医療スタッフによる透析治療管理
患者自身による薬剤・食事管理
患者自身または家族による透析治療・薬剤管理
(地域によって訪問看護によるサポート体制あり)
通院頻度週3回が標準的月1回が標準的
向いている人医療機関への高頻度の通院が可能な人自由な時間を確保したい人、医療機関への高頻度の通院が難しい人

どちらが適しているかは、生活スタイル、健康状態、自己管理のしやすさによって変わります。

まとめ ~自分に合った透析方法を選ぶことが大切~

血液透析と腹膜透析には、それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、「どちらが優れている」という絶対的な答えはありません。

重要なのは、自分の生活スタイルや健康状態に合った方法を選ぶことです。

また、透析方法は一度選んでも、体調や生活状況に応じて変更できる場合があります。

治療を長く続けるためにも、医師や看護師、家族とよく話し合い、自分にとって最適な方法を選択することが大切です。

参考文献

1.花房 規男,阿部 雅紀,他:わが国の慢性透析療法の現況 (2022年12月31日現在).透析会誌 56(12):473~536,2023

監修医師

戸田中央総合病院
腎センター長 兼 腎臓内科部長

井野 純先生

  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本透析医学会専門医・指導医
  • 日本腎臓学会専門医・指導医
  • 日本腎臓リハビリテーション学会腎臓リハビリテーション指導士
  • 日本腎代替療法医療専門職推進委員会腎代替療法専門指導士
  • 多発性嚢胞腎協会PKD認定医
  • 医学博士

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