長く透析治療を続けてきた患者さんが終末期を迎えるとき、家族としては「どのように最後の時間を過ごせばいいのか」「何をしてあげられるのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、透析患者の終末期に見られる症状や、症状ごとの緩和ケア、合併症への対策、そして家族が知っておくべき最後の過ごし方について解説します。
残された時間を穏やかに過ごすための参考にしてください。
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病院・クリニックを探す透析患者における終末期とは?
透析患者では、適切な透析治療を受け続けている限りにおいては、終末期と呼ぶことはありません。逆に言えば、透析を中止・見合わせることで、透析患者が終末期の段階に入ることも事実です。実際に、血圧低下や呼吸状態の悪化などにより安定した透析の実施が困難であるという医学的な理由や、患者・家族による透析中止の意思表示により、透析の見合わせが検討されることがあります。近年医療界全体で、人生の終末期に関する意思決定プロセスや緩和ケアのあり方などについての議論が活発化する中で、日本透析医学会が2016年に行った透析現場の実態調査においても、透析を中止・見合わせることが少なくないことが示されています1)。しかし透析の中止・見合わせに対する意思決定プロセスや緩和ケアを明示したガイドラインの整備は十分とは言えず、今後の更なる議論とガイドライン策定の必要性が求められている現状があります。
終末期の透析患者に見られる症状
安定した適切な透析の実施が難しい場合、または患者・家族から透析の中止希望が確認された場合、透析患者は終末期に向かって歩み始めることになります。この終末期以降に出現する可能性のある症状には、それまで透析が行っていた体内環境のバランスが崩れることによる、老廃物と水分の蓄積、電解質と呼ばれるミネラルバランスの保持ができなくなることに加え、体の多くの臓器機能の低下などから起こる、様々な症状があります。
現れる症状には個人差がありますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 全身の倦怠感・疲労感
- 食欲不振・体重減少
- 呼吸困難や胸の圧迫感
- むくみや体液貯留
- 意識の変化や混乱
- 痛みやしびれ
これらの症状は透析中止後、時間とともに強くなることが多く、患者本人の苦痛を和らげるためには、早めに緩和ケアの体制を整えることが大切です。
透析患者の最後に向けた緩和ケア
緩和ケアとは、終末期の透析患者が病気を治すために頑張ることよりも、残りの時間を安らかに過ごすことを目的とした医療サポートです。痛みや息苦しさなどの身体的な苦痛だけでなく、不安や孤独感といった精神的な負担を和らげることも含まれます。
緩和ケアはがん医療の分野でよく知られていますが、近年の腎臓病領域での緩和ケアの標準化を求める声に応じ、2025年に腎臓と透析の専門学会と緩和医療の専門学会が共同で、透析患者を含んだ腎不全患者に対する緩和ケアガイドライン2)を発表し、この中では、緩和ケアの重要性だけでなく、透析中止・見合わせへの患者・家族の意思決定プロセスの支援の方法などについても明記されています。
ここからは、終末期の症状に応じた緩和ケアの方法を詳しく見ていきましょう。
痛みや苦しみ、倦怠感を緩和するケア
終末期の透析患者は、腎不全や合併症の影響でさまざまな痛みを感じることがあります。また、体力の低下や老廃物の蓄積によって強い倦怠感が続くことも珍しくありません。
これらの痛みの緩和には、鎮痛薬が一般的に用いられます。
ただし、腎機能が低下しているため薬剤の選択や投与量には注意が必要で、医師による適切な調整が欠かせません。
また、温熱療法や軽いマッサージ、体位の工夫など非薬物的な方法も併用されます。
そのほか、本人の希望や体調に合わせて活動量を無理なく調整することで、残された時間の生活の質を保つことができます。
呼吸困難や胸苦しさを緩和するケア
終末期の透析患者は、呼吸困難や胸の圧迫感などを感じることがあります。これらの症状は不安や恐怖心を伴い、生活の質を大きく低下させます。
呼吸困難の緩和には、酸素投与や体をやや起こした「ファウラー位」での安静が有効です。
また、医療用麻薬(オピオイド系薬剤)は呼吸困難の感覚を和らげる効果があり、終末期ケアでも用いられます。
そのほか、部屋の換気や扇風機で顔に風を当てるなど、非薬物的な方法も患者の安心感につながるでしょう。
むくみや体液貯留を緩和するケア
終末期の透析患者は、透析による体内の水分バランスの調整ができないため、体内に水分が蓄積しやすくなり、手足や顔のむくみや体液貯留といった症状が現れることがあります。
これらは動作のしづらさや呼吸困難の原因にもなるため、適切なケアが必要です。
むくみや体液貯留を緩和するために、すぐに透析を中止にするのではなく、症状緩和が必要なタイミングで除水量や透析スケジュールの調整が行われることもあります。
また、食事での塩分や水分の摂取量を無理のない範囲で調整することも重要です。
ただし、過度な制限はかえって生活の質を下げるため、患者本人の希望を尊重しながら負担の少ない方法を選ぶことが大切です。
消化器症状を緩和するケア
終末期の透析患者は、老廃物の蓄積や代謝の変化により、吐き気・嘔吐・食欲不振・便秘などの消化器症状が起こりやすくなります。
これらは栄養摂取を妨げ、体力の低下や全身の倦怠感を悪化させる原因となるため、適切なケアが必要です。
吐き気や嘔吐に対しては、制吐薬が使用されるほか、便秘の場合は腎機能に配慮した緩下剤を選び、腸の動きを促すことで症状を緩和します。
また、食欲不振が強い場合には、少量でもエネルギーが摂れる食品や経口栄養補助飲料が勧められることもあります。経口摂取しやすいように食事の形態や、香り・見た目に変化をつけるなど、食事そのものの楽しみを保つ工夫も有効です。
心理的負担を緩和するケア
透析患者の終末期には、不安・孤独感・死への恐怖など、心理的な負担も大きくなります。
こうした心の痛みを和らげることも、緩和ケアの重要な役割です。
心理的ケアでは、まず安心して気持ちを話せる環境づくりを目指しましょう。家族や医療スタッフが傾聴し、患者の思いや希望を尊重することで、孤独感を軽減できます。
必要に応じて、臨床心理士や緩和ケアチームのカウンセリングを受けることも有効です。
また、趣味や音楽、写真など、患者が好きな活動を取り入れることで、残された時間に充実感や安心感をもたらせます。
終末期の透析患者には合併症対策も必要
透析患者の終末期には、腎不全そのものの症状に加えて、以下のような合併症が起こりやすくなります。
- 心不全や不整脈
- 感染症
- 血栓症 など
合併症対策としては、症状の早期発見と迅速な対応が不可欠です。
日常的にバイタルサインや体調変化を観察し、異常があれば速やかに医療機関へ相談しましょう。
特定の病院で緩和ケアを行っている場合は、ケアを行う担当科以外の診療科とも連携をとることが大切です。
【家族向け】透析患者との最後の過ごし方
透析患者が終末期を迎えたときは、患者本人だけでなく、その家族にも大きな負担がかかります。中には「どうやって最後を過ごせばいいんだろう」と悩んでしまう方もいるはずです。
そこでここからは、家族が知っておくべき最後の過ごし方について解説します。
透析の継続・中止の意思決定への参加
終末期を迎えた透析患者にとって、透析を続けるか中止するかは非常に重要な決断です。
一方、家族からすれば「できるだけ長生きしてほしい」と考えるのは当然ですが、終末期においては、患者本人の意思・生き方を尊重する姿勢が望ましく、患者本人を中心に、家族や医療チームが話し合いながら、最終的にどのように患者を支えるべきかを決めなければなりません。
治療に対する意思決定のプロセスでは、医師から治療継続と中止それぞれの予測される経過や症状を説明してもらい、患者と家族が納得できる形で治療選択することが大切です。
終末期においては急な状況変化が起こり得ますので、万が一に備え、早めに話し合いを始めておくことが望ましいでしょう。
最後の時間に向けた体制づくりへの参加
透析患者が終末期を迎える際には、どこで、どのように最期を過ごすのかを事前に決めておくことが大切です。
選択肢としては、自宅での看取りと病院・ホスピスなどでの看取りがありますが、どちらを選ぶ場合でも、事前に患者本人を中心に、家族と医療機関や在宅医療チームとが連携し、必要な物品や緊急時の連絡体制を整えておくことが重要です。
患者の希望と家族の状況を踏まえて、無理のない緩和ケアの体制をつくることが、穏やかな最期につながります。
日常生活でのケア・サポートへの参加
終末期の透析患者を支える日常生活のケアは、体の清潔保持・食事の工夫・体位の調整など、基本的なサポートが中心です。
家族や在宅医療・緩和ケアチームの協力のもとに、これらを支えることは患者の生活の質を保つために欠かせません。たとえば、以下のようなケアやサポートが必要になることを覚えておきましょう。
- 入浴やトイレ、ベッドからの移動補助
- 食事の献立や時間の工夫
- 本人の趣味や楽しみを可能な範囲で実施
日常の小さな配慮が、残された時間を穏やかに過ごすための大きな支えとなります。
患者とのコミュニケーションの取り方
終末期を迎えた透析患者とのコミュニケーションでは、以下のような取り組みが大切です。
- 傾聴する
- 希望や意思を確認する
- 日常会話を大切にする
- 非言語的なコミュニケーションも取り入れる
これらの働きかけによって、患者の思いを引き出し、尊厳を守るコミュニケーションは、本人だけでなく家族の心の整理や安定にもつながります。
医療機関との連携
透析患者の終末期ケアを安心して行うためには、医療機関や在宅医療チームとの密な連携が欠かせません。
主治医との定期的な情報共有や訪問診療・看護などの在宅サービスを利用し、症状の変化や緊急時に迅速に対応できる体制を整えることで、患者と家族双方の負担を軽減できます。
まとめ
透析患者の終末期には、倦怠感や呼吸困難、むくみ、消化器症状、心理的負担など、さまざまな症状が現れます。
これらの苦痛を和らげるためには、緩和ケアが重要であり、痛みのコントロールから心のサポートまで幅広い対応が必要です。
大切なのは、患者本人の意思を尊重し、その人らしい最期を迎えられるようサポートすることです。
早い段階から医療者や家族で話し合い、納得できる選択と準備を進めることで、安らかな最後の時間を過ごすことができます。
参考文献
1) 日本透析医学会「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」―その後の実態調査― 日透析医会誌2019;34:110-116.
2) 日本緩和医療学会,日本腎臓学会,日本透析医学会「腎不全患者のための緩和ケアガイダンス」2025年9月発行.
透析治療について、
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