透析アミロイドーシスは、長期間(一般的に10年以上)の透析治療の経過中に発症する重篤な合併症です。原因物質と考えられているβ2ミクログロブリンが、関節や骨、腱、靭帯などに沈着することで起こります。
発症すると、痛みやしびれ、関節の動きの制限などが現れ、日常生活に影響を及ぼすこともあるため、事前に原因や症状、予防法を理解しておくことが大切です。
本記事では、透析アミロイドーシスの原因や症状、診断方法、治療法、さらに予防のポイントまで詳しく解説します。
透析治療について、
こんなお悩みは
ありませんか?
- 現在通っている施設からの転院を検討している
- 通院の負担を減らしたくて無料送迎のある病院を探している
- 旅行や帰省先で臨時透析を受けたい
透析治療には、患者さまそれぞれのご事情に合わせたサポート体制が欠かせません。 戸田中央メディカルケアグループでは、旅行・帰省時の臨時透析や、入院治療への対応、また総合病院との連携による多面的な医療サポートを提供しています。
透析治療をお探しの方、お気軽にご相談ください
病院・クリニックを探す透析アミロイドーシスとは?
透析アミロイドーシスは、長期間の透析治療によって体内にβ2ミクログロブリンというたんぱく質が蓄積し、それが関節や骨、腱、靭帯などに沈着することで起こる病気です。
透析アミロイドーシスの原因
透析アミロイドーシスの原因物質と考えられているβ2ミクログロブリンは、本来誰もが持っているたんぱく質の一つで、体内の全ての有核細胞に発現しています。細胞が古くなり新たな細胞と入れ替わる(代謝される、とも言います)際に血液に放出されますが、腎臓が健康で、腎機能が保持されていれば、このたんぱく質は腎臓で尿が作られる過程で99.9%分解されてしまいます。
しかし、腎機能が極端に低下して透析を行っている場合は、腎臓での分解ができなくなり、また透析でも完全に除去することが難しいため、長期間にわたり透析を行っているうちに、少しずつ体内に溜まっていきます。
また、このβ2ミクログロブリンは体内に溜まるだけではなく、様々な要因によってその立体構造が変化し、アミロイド線維という病的なたんぱく質に変性するのです。
この病的なたんぱく質は、体内の組織、特にコラーゲンが豊富な組織(関節滑膜、腱、靭帯)に沈着しやすい性質があるため、関節を中心とした沈着部位に様々な症状が出てくるのです。
透析アミロイドーシスの発症リスクとして、以下の要因が考えられています。
- 透析歴が長い:治療期間と比例して発症頻度が増します。
- 高齢であること:高齢導入患者では、若年層よりも発症リスクが高い傾向にあります。
- 栄養不良:栄養状態を評価するアルブミンというたんぱく質が低い患者では発症リスクが高いことが知られています。
- 慢性炎症:透析に伴う長期的な炎症状態が、アミロイド線維の形成を促します。
なお、最近では、透析技術の向上や透析時間の延長・頻回透析によって、β2ミクログロブリンの除去効率が改善し、発症リスクを抑えられるようになってきています。
透析アミロイドーシスの主な症状
透析アミロイドーシスは、関節や骨、腱、靭帯にアミロイドが沈着することで、さまざまな運動器症状を引き起こします。
ここからは、代表的な症状について詳しく解説します。
多関節痛
透析アミロイドーシスでは、アミロイドが肩、膝、手首、股関節など複数の関節に沈着し、慢性的な関節痛を引き起こすことがあります。
痛みは動作時に強くなることが多く、進行すると安静時にも痛みを感じるようになることも少なくありません。
また、症状が悪化すると関節の可動域が狭まり、歩行や着替え、物を持つ動作など、日常生活の動作が制限されることもあります。
手根管症候群
手根管というのは、手首や手の母指側(親指・人差し指・中指)の指を動かしたり、感覚を脳に伝えたりする正中神経という神経が通る、細いトンネル状の構造部位で、ちょうど掌と手首の境界あたりに位置しています。手根管症候群は、何らかの原因で、手根管内部を通る正中神経が圧迫されることで起こる神経障害です。
このうち、透析アミロイドーシスでは、アミロイドが手根管の内部に沈着し、トンネルの通り道が狭くなることで、正中神経が圧迫されて発症するとされています。
主な症状や特徴は以下のとおりです。
- 親指、人差し指、中指、そして薬指の半分にかけてのしびれや痛みが出る
- 物をつかみにくい、ボタンがかけにくいなどの細かい動作への障害
- 朝方や夜間に症状が出やすい
進行すると、親指の付け根の筋肉がやせ細り(母指球筋萎縮)、握力低下や日常動作への支障が出ることもあります。
肘部管症候群
肘部管は、肘の内側にある、骨や靭帯で囲まれた狭いトンネル状の空間のことで、この肘部管の中を尺骨神経が走行しています。尺骨神経は手の小指側(小指と薬指)の運動や感覚を司っている神経です。
透析アミロイドーシスでは、この肘部管周囲にアミロイド線維が沈着し、尺骨神経を圧迫することで発症します。
主な症状は以下のとおりです。
- 小指と薬指の一部におけるしびれや感覚低下
- 指先の細かい動作がしづらくなる
症状が進行すると指が変形し、鷲手変形(小指と薬指が曲がったまま伸びにくくなる)になることもあります。
弾撥指(ばね指)
指には筋肉が無いため、指の曲げ伸ばしは、手首から肘にある前腕という部分の筋肉が伸び縮みすることから始まります。前腕の筋肉からは、腱という細くて丈夫なひものような組織が指に向かって伸びており、指の骨とつながっています。前腕の筋肉が縮むと、腱が骨を引っ張るので指が曲がるのです。
さて、この腱は、前腕の筋肉から出発して、自身がつながっている骨に到達する途中で、いくつかの腱鞘という短いトンネルのような組織の中を通ることで、骨に沿って滑らかに動くことができるのです。しかし何らかの原因によって腱や腱鞘に炎症が起きた際には、腱が分厚くなったりコブになったり、あるいは腱鞘の内部が狭くなることがあります。すると、腱のコブが腱鞘を通りづらいために、指の曲げ伸ばしが滑らかにできなくなってしまうのです。
典型的な症状として、曲げた指を伸ばす際に、腱のコブが腱鞘を無理に通るかたちとなるために、指が、カクン!とばねの様に急激に伸びる現象があり、これがばね指と言われる由縁です。
ばね指が起こる原因は、指の使い過ぎ、女性ホルモンの急激に低下、高血糖などに分かれますが、透析アミロイドーシスでは、やはりアミロイドが腱や腱鞘に沈着し、発症リスクが高まります。
主な症状は以下のとおりです。
- 指の関節部分にしこりの様な腫れができる、またはそこに圧痛がある
- 指を曲げたあと伸ばそうとするとカクンと引っかかる感覚がある
- 指が曲がったまま伸ばしにくい、逆に指が伸びたまま曲げづらくなる
- 朝起きたときや指の使い始めに症状が強く出て、指を使い始めると症状が改善する
など様々です。症状が進行すると指が完全に伸びなくなることもあるため、早期の処置が必要です。
透析脊椎症
透析脊椎症は、長期間の透析によって蓄積したアミロイドが脊椎(背骨)やその周囲の組織に沈着し、構造的な変化や神経圧迫を引き起こす病態です。
特に頸椎(首の骨)や腰椎(腰の骨)に多く見られ、以下のような症状が出ます。
- 首や腰の慢性的な痛み
- 腕や脚のしびれ・筋力低下
- 歩行時のふらつきや歩幅の減少
進行すると排尿・排便障害が起こることもあるほか、上記の神経圧迫が強く出て日常生活に大きな支障が出る場合は、脊椎手術で圧迫を解除する必要があります。
骨嚢胞
骨嚢胞は、骨の内部に液体や軟らかい組織がたまって袋状の空洞ができる病気です。
透析アミロイドーシスでは、蓄積したアミロイドが骨内に沈着して骨の構造を弱くし、その結果、骨嚢胞が形成されるとされています。
主な特徴は以下のとおりです。
- 初期は自覚症状がほとんどない
- 進行すると関節痛や圧痛が出る
- 骨がもろくなり、骨折のリスクが上昇する
骨嚢胞は、X線検査やMRIで発見されることが多く、症状が軽い場合は経過観察となりますが、痛みや骨折リスクが高い場合は外科的治療や骨補強術が検討されます。
手背のアミロイド症
ばね指と同様に、手に発症する透析アミロイドーシスの一つです。手背(手の甲)には、手を反らせたり指をまっすぐ伸ばすための背側手根靭帯・伸筋腱などの組織が存在します。手背のアミロイド症は、この靭帯や腱、皮下組織などにアミロイドが沈着し、指や手首が反らなくなったり、腫れや傷みが生じるといった症状が出現することがあります。
主な特徴は以下のとおりです。
- 手の甲が腫れて厚みが増す
- 手の甲を押すと硬く感じるしこりがある
- 指や手首を反らすのが難しくなる
症状が軽い場合は経過観察で問題ないこともありますが、可動域制限や疼痛が強い場合は、外科的に沈着部位を切除する手術が行われます。
戸田中央メディカルケアグループの透析治療
病院・クリニックを探す透析アミロイドーシスの検査・診断方法
透析アミロイドーシスの診断は、問診による症状や透析歴の確認に加えて、画像検査や病理検査を組み合わせて行われます。
代表的な診断方法は以下のとおりです。
| 診断方法 | 内容 |
|---|---|
| 問診・身体所見 | 痛みやしびれの部位、透析歴、日常生活の支障度を確認 |
| X線検査 | 骨の変形や骨嚢胞の有無を確認 |
| MRI | 神経圧迫や軟部組織の沈着を詳細に描出 |
| 超音波検査 | 超音波で関節や腱の状態を確認 |
| 血液検査 | β2ミクログロブリンの血中濃度を測定 |
| 病理検査 | 病変部の組織を採取しアミロイド沈着を確認 |
手根管症候群が疑われる場合の診察方法
問診・身体所見に加え、手根管症候群の可能性がある場合は、以下のような整形外科的な診察手法が用いられます。
- ファーレンテスト:手首を軽く曲げ甲を合わせた状態を1分間保持し、親指、人差し指、中指、薬指の親指側の指先にしびれや痛みが誘発された場合を陽性とする
- チネルサイン:手根管部を軽くたたき、指先にしびれがひびく場合を陽性とする


透析アミロイドーシスの治療法
現在、体内に蓄積したアミロイドを完全に除去する根治療法はありません。
そのため、透析アミロイドーシスの治療では、症状の進行を抑えて生活の質を維持するために、以下のような治療が行われるのが一般的です。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| 薬物療法 | 鎮痛薬、神経障害性疼痛薬、ステロイドなどの抗炎症薬の服用 |
| リハビリテーション | 関節可動域訓練や筋力維持の運動療法 |
| 装具療法 | 手首や肘、指などの固定・安静保持 |
| 外科的治療 | 手根管開放術、肘部管開放術、腱鞘切開術、脊椎手術、アミロイド沈着部切除など |
治療方法は、症状の部位や重症度、全身状態、透析歴などを考慮して決定されます。
早期に適切な治療を行うことで、症状の進行を抑えることが可能です。
透析アミロイドーシスの予防法
透析療法による透析アミロイドーシスの主な予防法は、以下のとおりです。
| 予防方法 | 内容 |
|---|---|
| 高純度透析液の使用 | エンドトキシンなどの不純物を含まない透析液を用いることで、リンパ球の活性化を抑え、β2-MGの過剰産生を防ぎます。 |
| 生体適合性の高い透析膜の利用 | 免疫反応を起こしにくい素材を使うことで、炎症やβ2-MGの産生増加を抑制します。 |
| 高性能膜の使用 | 通常膜よりも大きな分子を通すことができ、β2-MGの除去効率が高まります。 |
| 血液透析濾過(HDF)やオンラインHDF | β2-MGなどの中分子量物質を効率的に除去でき、蓄積を減らすことが可能です。 |
| β2-MG吸着カラムの使用 | 特殊なカラムでβ2-MGを直接吸着・除去し、体内負担を軽減します。 |
| 透析条件の見直し | 透析時間を延長したり、血流量を増やして透析量を確保することで、除去効率をさらに向上させます。 |
これらの予防策は、どれも患者さんご自身で行う内容のものではなく、各透析施設で専門スタッフにより適切に選択させていただくものです。これにより透析アミロイドーシスの発症や進展抑制を目指して、継続的により良い治療が行われます。
まとめ
透析アミロイドーシスは、長期間の透析によって体内に蓄積するβ2ミクログロブリンが関節や骨、神経に沈着し、痛みやしびれ、可動域制限などを引き起こす病気です。
完全な根治は難しいものの、透析条件の改善、薬物療法などを組み合わせることで症状を緩和し、進行を抑えるほか、早期からの予防的アプローチが重要です。
透析歴が長くなってきた方や、関節の違和感・手のしびれなどの症状を感じている方は、早めに医師へ相談し、必要に応じて検査や治療を検討しましょう。
透析治療について、
こんなお悩みは
ありませんか?
- 現在通っている施設からの転院を検討している
- 通院の負担を減らしたくて無料送迎のある病院を探している
- 旅行や帰省先で臨時透析を受けたい
透析治療には、患者さまそれぞれのご事情に合わせたサポート体制が欠かせません。 戸田中央メディカルケアグループでは、旅行・帰省時の臨時透析や、入院治療への対応、また総合病院との連携による多面的な医療サポートを提供しています。
透析治療をお探しの方、お気軽にご相談ください
病院・クリニックを探す
