戸田中央総合病院 副院長 兼 センター長 井野 純
ドクターインタビュー
戸田中央総合病院の腎センターでは、腎臓内科、泌尿器科、移植外科が連携し、保存期の腎臓病から透析、腎移植まで一貫した診療を行っています。なかでも力を入れているのが、多職種で腎機能の維持を支える「腎ケア外来」と、患者自身の価値観に沿った治療選択を支援する「療法選択外来」です。地域の医療機関とも連携しながらCKD患者を支える同院の取り組みについて、腎臓内科の井野純副院長(腎センター長)にお聞きしました。(取材日2026年9月17日)
3つの診療科が連携 保存期から腎移植まで支える腎センター
――はじめに、先生が腎臓内科を専門に選ばれた理由を教えてください。
検査から得られる限られた情報を一つひとつ積み上げ、自分の頭で考えながら診断や治療にたどり着いていくところに魅力を感じ、腎臓内科を選びました。
例えば、診療科によっては画像検査など多くの検査を組み合わせることで異常を見つけて治療を行うこともあります。一方、腎臓内科では、診断の入り口となるのは主に尿検査と血液検査です。最終的には腎生検という検査もありますが、何度も行えるものではありません。だからこそ、限られた検査結果を組み合わせ、矛盾がないように診断までの道筋を組み立てていく必要があります。そうした診療のアプローチが自分には向いていると感じました。

――CKD(慢性腎臓病)を診るうえで重要なことは何でしょうか。
CKDでは、腎機能をできるだけ維持していくことが大きな目標になります。腎機能は年齢とともに低下するため、腎機能の程度を示すeGFRという指標を見て、まず年齢相応の低下なのかどうかを考えます。
年齢だけでは説明できないほど腎機能が低下していれば、ほかに原因がないかを調べ、治療できるものがあれば治療していきます。また、eGFRの数値だけでなく、尿蛋白の有無や、ここ1~2年で腎機能がどのくらい低下しているかも重要です。一時点の数値だけで判断せず、その方の年齢や経過を見ながら考えることが大切です。
――戸田中央総合病院では、腎臓病の診療を「腎センター」に集約しています。腎センターの特徴や強みを教えてください。
腎センターの特徴は、大きく2つあります。1つは、腎臓内科、泌尿器科、移植外科の3つの診療科が一つの窓口になっていること。もう1つは、保存期の腎臓病から透析、腎移植まで一貫して対応できることです。
腎臓や尿に異常が見つかっても、患者さん自身ではどの診療科を受診すればよいのか判断できないことがあります。例えば尿検査で異常を指摘された場合、腎臓病だけでなく、尿管結石や膀胱炎など泌尿器科の病気の可能性もあります。
3つの診療科が一つの窓口になっているため、まず腎センターを受診していただき、必要に応じてその日のうちに適切な診療科につなぐことができます。患者さんが「あっちへ、こっちへ」と複数の診療科を回ることなく、スムーズに診療を受けられることは大きなメリットです。
また、透析や腎移植が必要になる前の保存期から、血液透析、腹膜透析、腎移植に関する情報提供や、治療に向けた準備を行い、適切なタイミングでの対応が可能です。特に腎移植は、実際の手術にいたるまでに多くの検査が必要で、事前の計画性が重要な治療になります。当院では、これまで約400例の腎移植を手がけるなど、県内でも屈指の実績があり、長年にわたって移植医療に取り組んできた自負もあります。安心して治療を受けていただけると思います。
腎機能を守り、その人らしい治療選択へ
――腎ケア外来にも力を入れているとうかがっています。どのような取り組みなのでしょうか。
腎機能をできるだけ維持することを目的に、多職種で患者さんを継続的に支援する外来です。基本的には2~3カ月に1回、全6回、約1年をかけた教育プログラムを行っています。私たちが目指しているのは、単に「透析にならない」ことではなく、患者さん自身の腎機能を守るために何ができるかを一緒に考え、その結果として腎機能が維持されることです。
看護師による療養指導のほか、栄養指導、薬剤指導、リハビリ指導をそれぞれの専門職が担当します。1回の指導だけでは「腎臓を守ろう」という意識はなかなか定着せず、時間がたつと自己流になってしまうこともあります。そこで継続して関わる中で、患者さん一人ひとりから寄せられる質問に丁寧に対応し、必要であれば軌道修正しながら、腎臓を守るための視点を根付かせることを目指しています。
――腎ケア外来の導入によって、どのような成果が得られていますか。
腎ケア外来を受けた患者さんでは、受けていない患者さんに比べて、腎機能が低下する速度を遅くできたという結果が得られています。
プログラムは、新しい知見を取り入れながら継続的に改善してきました。最近では、睡眠の質や腸内環境、排便のコントロールなどが腎臓病の進行に関係することが分かってきたため、こうした内容も盛り込みながら、患者さんへの指導に厚みを持たせることができるようになりました。
また、スタッフは2カ月に1回集まり、指導に使う資材の見直しや、対応に困っているケースについて話し合っています。さらに、腎代替療法が必要になった場合でも、早い段階から準備を進めることで、腎代替療法の緊急導入を減らし、その結果入院期間を短くできたという結果も得られました。

――腎代替療法を考える患者さんを対象に、「療法選択外来」も設けているとうかがっています。
療法選択外来は、腎機能が低下し、腎代替療法が必要になる可能性のある患者さんに、それぞれの治療について情報を提供し、どの治療を選ぶか一緒に考える外来です。
選択肢として、透析には血液透析と腹膜透析、腎移植には家族などから腎臓の提供を受ける生体腎移植と、亡くなった方から提供を受ける献腎移植があります。さらに、透析や移植を希望しない方には、保存的腎臓療法(CKM)という選択肢もあります。
大切にしているのは、医療者側が「この治療がお勧めです」と優先順位を示すのではなく、それぞれの選択肢を横並びにして情報を提供することです。例えば血液透析は週3回程度、透析施設へ通う必要がありますが、腹膜透析は自宅で行います。選ぶ治療によって、その後の生活に与える影響は大きく違います。
だからこそ、患者さんの生活スタイルや価値観を大切にし、金銭面での不安や家族の負担への後ろめたさ、さらには死生観まで含めて話を聞きます。あくまで治療を選ぶのは患者さん自身ですが、「自分で選ぶ」ということの難しさもスタッフは皆理解しています。十分な情報を提供したうえで、「どの治療なら自分らしく生きられるのか」を一緒に考え、その意思決定を支えることが療法選択外来の大きな役割です。
また、腎移植を希望する場合には、移植外科への受診をスムーズにつなぐことで、移植に向けた準備を早めに始めることができ、透析を経ずに腎移植を受けられる場合もあります。
――地域の中で、戸田中央総合病院の腎臓内科が担っている役割についても教えてください。
戸田・蕨地域には腎臓専門医や腎臓病の入院治療に対応できる大きな病院が少ないため、精査や入院の受け入れ先として重要な役割を担っています。尿所見異常のある患者さん、腎機能が悪化した患者さん、CKDに伴う合併症や感染症など、広く入院治療に対応するほか、透析クリニックから透析患者さんの合併症について紹介を受けることもあります。
一方、地域のかかりつけ医との役割分担も重視しています。例えば健診で異常を指摘された患者さんを紹介いただき、詳しい検査をして診断や治療方針が固まったら、安定している時期はかかりつけ医中心に診察と処方を受けていただきます。腎臓内科では3カ月や半年に1回、必要な検査を行い、変化があれば再び薬剤などの治療方針を再検討するなど、お互いに役割を分担しながら1人の患者さんを支えていきます。
地域の医療機関と近い関係をつくり、お互いに患者さんを依頼するハードルを下げておくことで、何か変化があったときにもスムーズに必要な診療につなげやすくなると考えています。
地域で進めるCKDの早期受診・早期治療
――地域の医療機関との連携を深めるために、どのような取り組みを行っていますか。
10年以上前から、地域の腎臓専門医やリーダー的役割の先生方と「埼玉県南部CKD連携協議会」を組織し、年2回、近隣のクリニックの医師や多職種のスタッフを対象に腎臓病に関するセミナーや懇話会を開いています。また、定期的に近隣のクリニックへ出向き、連携上の問題点について話し合う機会も設けています。
特に重視しているのが、どのようなタイミングで腎臓専門医に紹介するかという基準を共有することです。こうした取り組みを続けた結果、紹介時の患者さんのeGFRが以前より高くなっているというデータが得られており、これは、腎臓病のより早い段階で紹介していただけるようになったということを示しています。
今後も紹介基準を繰り返し伝えながら、できるだけ早い段階で専門医につないでいただけるよう、地域でCKDの患者さんを支えていきたいと思っています。
――最後に、腎臓病を心配している方や、治療に不安を感じている方へメッセージをお願いします。
腎臓病は慢性的な病気であることが多く、長く付き合っていく必要があります。腎臓病が重ければ重いほど、その後の腎機能の維持が難しくなるため、長く腎機能を維持していくためには、早い段階で異常に気づき、必要であれば治療を始めることが大切です。
健診で異常を指摘されたり、かかりつけ医から受診を勧められたりしたら、たとえ症状がなくても、ぜひ一度ご相談ください。自分の腎臓をいたわるためにも、腎機能について少しでも心配なことがあれば、気軽に受診していただければと思います。
また、できるだけの治療を行って、たとえ結果的に透析が必要になったからといっても、それまでの生活や人生が終わるわけではありません。透析によって命を支えながら、その先にあるその人らしい生き方が見えてくるようサポートすることも、私たちの大切な役割なのです。

戸田中央総合病院

JR埼京線「戸田公園」駅から徒歩約5分の場所にある当院は、血液透析・腹膜透析・腎移植に対応する総合病院です。
外来透析・入院透析のどちらにも対応しており、夜間透析も行っています。さらに、オンラインHDF・血漿交換療法・血液吸着療法(レオカーナ、LDLアフェレーシス等)といった高度な血液浄化治療も実施しています。
当院には30の診療科があり、透析患者さまに起こりやすいさまざまな合併症にも幅広く対応可能です。透析の導入から緊急時まで、患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案・ご提供いたします。
取材・執筆:横井かずえ(医療ライター)
医療専門紙の記者を経て、2014年にフリーランスとして独立。医療機関や医療従事者への取材を中心に、医療・ヘルスケア分野の記事や書籍の執筆を手がける。
透析治療について、
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- 現在通っている施設からの転院を検討している
- 通院の負担を減らしたくて無料送迎のある病院を探している
- 旅行や帰省先で臨時透析を受けたい
透析治療には、患者さまそれぞれのご事情に合わせたサポート体制が欠かせません。 戸田中央メディカルケアグループでは、旅行・帰省時の臨時透析や、入院治療への対応、また総合病院との連携による多面的な医療サポートを提供しています。
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