八王子山王病院
内科部長 小松秀平
臨床工学技士(科長) 市倉俊
透析看護認定看護師 中村千里
医療スタッフインタビュー
八王子山王病院では、外来透析に加え、入院透析や腹膜透析にも対応し、患者さんの状態や生活に合わせた透析医療を提供しています。シャントの作製やトラブルへの対応を院内で行えることも特徴の一つです。医師、臨床工学技士、看護師がそれぞれの専門性を生かし、長期にわたる治療をどのように支えているのか。腎臓内科の小松秀平先生、臨床工学技士・科長の市倉俊さん、透析看護認定看護師の中村千里さんにお話を伺いました。(取材日2026年9月17日)
入院透析の受け入れからシャント治療まで 地域の透析医療を支える
――はじめに、八王子山王病院の透析室の概要や特徴について教えてください。
小松:当院の透析室には12床の透析ベッドがあり、外来透析と入院透析の両方に対応しています。最近では送迎サービスも開始し、通院が難しくなってきた患者さんや、少し離れた地域にお住まいの患者さんも受け入れています。
当院の特徴の一つは、入院透析を必要とする患者さんを積極的に受け入れていることです。急性期病院での治療を終えても、透析が必要なために転院先がなかなか見つからない患者さんがいらっしゃいます。当院では、そうした患者さんを受け入れ、リハビリなどを行いながら、必要に応じて療養型病院への転院につなげています。当院で最期まで過ごされる方もいらっしゃいますが、急性期病院と療養型病院の間をつなぐことも、地域における大切な役割だと考えています。
また、血液透析だけでなく、腹膜透析にも対応しています。患者さんが希望される場合、他院で腹膜透析を導入した後の維持管理を当院で行う形も取っています。
――シャントの作製やトラブルへの対応にも力を入れているそうですね。
小松:透析に必要な内シャントの作製から、長期留置カテーテルの挿入、血管の狭くなった部分を広げるPTA(経皮的血管形成術)まで、院内で対応できる体制を整えています。年間の実績は、内シャント作製が12件、長期留置カテーテルが20件、PTAが63件で、合計95件です。
一般的な透析クリニックでは、シャントにトラブルが生じると、大きな病院へ紹介するケースも少なくありません。その場合、患者さんは別の医療機関へ移動する必要があり、負担がかかります。当院では、こうした治療を院内で完結できることが大きな強みだと考えています。
また、腎移植を希望される患者さんについては、東京医科大学八王子医療センターと連携し、専門的な治療につなげています。
――透析患者さんを長期にわたって支えるうえで、先生が大切にしていることは何でしょうか。

小松:患者さんの状態や人生の段階に応じて、治療のあり方を考えることです。当院では、透析患者さんの人生の最終段階まで関わることも少なくありません。
透析患者さんは、腎機能が低下した頃から長年にわたり、食事や水分の制限を続けています。しかし、最期まで制限を続けるのではなく、最後くらいは好きなものを食べたり飲んだりして、できるだけ自由に過ごしていただきたいという思いがあります。
また、終末期には透析時間を短くしたり、除水量を減らしたりして、体への負担を軽減することも考えます。透析そのものが苦痛となり、ご本人が中止を希望される場合には、その選択についても考えていきます。
もう一つ、「ラストPD」という考え方もあります。これは、人生の最終段階まで腹膜透析(PD)を続けるというものです。腹膜透析は、週に数回の血液透析と異なり、毎日少しずつ老廃物や余分な水分を取り除くため、体への負担が比較的少ない治療です。高齢の患者さんなどでは、血液透析に切り替えず、できるところまで腹膜透析を続け、天寿を全うするという選択肢もあります。
治療を続けることだけを考えるのではなく、患者さんが残された時間をどのように過ごしたいかを大切にしたいと考えています。
エコー下穿刺の技術を高め、患者さんの負担を軽減
――透析室では、臨床工学技士はどのような役割を担っているのでしょうか。

市倉:透析治療には機械が欠かせないため、透析装置の点検や管理は臨床工学技士の重要な仕事です。当院でも、使用前の点検、透析中の管理、治療後の洗浄、定期的なメンテナンスや部品交換などを行っています。
ただ、臨床工学技士は機械だけを見ているわけではありません。「臨床」という言葉が付いているように、患者さんの状態をしっかりと見ることも大切な役割です。
透析中は、看護師や医師と協力しながら、血圧などの状態を確認します。また、透析で取り除く水分の量や速度、治療に使用するダイアライザーの種類などについても医師と相談し、患者さんに合った治療を行えるよう努めています。
――臨床工学技士として、特に力を入れている取り組みについて教えてください。
市倉:特に力を入れているのが、透析に必要なシャントの管理です。エコー(超音波検査)を使ってシャントの状態を評価するほか、針を刺すのが難しい患者さんには、エコーで血管の位置を確認しながら穿刺する「エコー下穿刺」を行っています。
透析患者さんは、長年にわたって繰り返し太い針を刺されることになります。穿刺時の痛みや、うまく針が入らず何度も刺し直されることは、患者さんにとって大きなストレスです。だからこそ、できるだけ失敗を減らし、少しでも負担を軽くしたいと考えています。
私が当院に異動してきた当時は、エコーによるシャントの評価は行っていましたが、エコー下穿刺はまだ十分に普及していませんでした。そこでスタッフへの技術指導に取り組み、現在では対応できるスタッフも増えてきています。
また、最近ではPTAの介助にも取り組んでいます。穿刺の技術を高めるだけでなく、シャントの管理に幅広く関わっていきたいと考えています。
患者さんの思いに寄り添い、納得できる治療選択を支援

――透析室の看護師として、患者さんとの関わりで大切にしていることは何でしょうか。
中村:患者さんが何でも話しやすい雰囲気をつくることです。透析は週3回、長年にわたって通院を続ける治療です。患者さんによっては、ご家族よりも私たちスタッフと顔を合わせる機会のほうが多いこともあります。
一方で、患者さんの希望を何でも受け入れるわけではありません。例えば透析時間を短くしてほしいと言われた場合には、それによるデメリットもきちんと説明します。患者さんの思いに寄り添いながらも、医療者として必要なことは、やわらかく、しかし明確に伝えるようにしています。
――中村さんは透析看護認定看護師の資格をお持ちですが、その専門性をどのように生かしていますか。
中村:特に力を入れているのが、透析を始める前の患者さんへの意思決定支援です。当院では、腎機能が低下した保存期から、透析導入、長く治療を続ける維持期、そして終末期まで、一連の経過に関わることができます。
まず小松先生が外来で、透析導入が近づいてきた患者さんに治療の必要性を説明します。その後、私たち看護師も患者さんとお話しし、血液透析だけでなく、腹膜透析や腎移植という選択肢について、それぞれのメリット・デメリットをお伝えしています。患者さんがご自身の生活や希望に合った治療を選べるよう、医師や看護師が連携して支援しています。
例えば、ご高齢ではあったものの、ご自身でスマートフォンを使って予定を管理し、趣味も多く、活動的に過ごされている患者さんがいらっしゃいました。ご自宅での生活を大切にしたいという希望をお持ちだったため、お話を重ねた結果、腹膜透析を選択されました。今も元気に過ごされている姿を見ると、本当にお話ししてよかったと感じます。
また、透析を続けていた患者さんが腎移植を選択し、今も元気に外来へ通っていて、ときどき透析室にも顔を見せてくださいます。そうした姿を見ると、とてもうれしいですね。
透析室の中だけでなく、患者さんのその後の人生まで考えながら支援できることが、認定看護師としてのやりがいだと感じています。
職種の垣根を越えた連携で、安全・安心な透析医療を
――医師、臨床工学技士、看護師の連携について、どのようなことを大切にしていますか。
小松:例えば、シャントの管理では、日頃から穿刺を担当している臨床工学技士や看護師の気づきがとても重要です。針を刺すときの感覚から、血管が細くなってきた、血液の流れが悪くなってきたといった変化に気づくことがあります。そうした情報を伝えてもらうことで、必要な検査や治療につなげることができます。シャントは詰まってからでは遅いので、詰まる前に異常を見つけて対応することが大切だと考えています。
市倉:それぞれの職種が異なる視点から患者さんを見ることも大切だと思っています。例えば、透析中に患者さんの血圧が下がった場合、臨床工学技士は除水量や除水速度に問題がないかを考えます。一方、医師や看護師は薬の影響など、別の視点から原因を考えます。こうして互いの専門性を生かすことで、一つの職種だけでは気づきにくい問題にも対応できると考えています。
中村:当院は職種間の垣根が低く、気になることがあればすぐに相談できる環境です。職種によって考え方が異なることもありますが、医師を含め、スタッフ同士が遠慮せずに意見を交わせる関係ができています。患者さんの小さな変化や気になることもすぐに共有でき、必要な対応につなげられることが、患者さんの安全や安心につながっていると思います。
――最後に、透析を受ける病院を探している患者さんや、転院を検討している方へメッセージをお願いします。
小松:透析は長く続く治療ですから、患者さん一人ひとりの状態や生活に合わせて、できる限りの支援をしていきたいと考えています。
中村:気になることや困ったことがあれば、遠慮なく声をかけていただきたいですね。どんな小さなことでも、一緒に考えていきたいと思っています。
市倉:「穿刺が痛くなかったよ」「ありがとう」という患者さんの言葉が、何よりの励みです。これからも一回一回の透析を大切にしていきたいと思います。ぜひ当院を選んでいただけたらうれしいですね。

八王子山王病院

八王子山王病院は、外来透析・入院透析・腹膜透析に対応し、患者さん一人ひとりの状態や生活に合わせた透析医療を提供しています。透析室には12床のベッドを備え、通院を支援する送迎サービスも行っています。
当院の特徴は、入院透析を必要とする患者さんの積極的な受け入れです。急性期病院での治療を終えた患者さんを受け入れ、リハビリなどを行いながら、必要に応じて療養型病院への転院を支援しています。
また、内シャントの作製や長期留置カテーテルの挿入、PTA(経皮的血管形成術)にも院内で対応しており、シャントトラブルの際にも患者さんの負担を軽減できる体制を整えています。
取材協力
八王子山王病院
小松 秀平 内科部長
日本透析医学会専門医/日本腎臓学会専門医・指導医/日本医師会認定産業医/認定内科医
市倉 俊 臨床工学技士(科長)
透析技術認定士/3学会合同呼吸療法認定士/認定医療機器管理臨床工学技士
中村 千里 透析看護認定看護師
透析看護認定看護師/透析技術認定士
取材・執筆:横井かずえ(医療ライター)
医療専門紙の記者を経て、2014年にフリーランスとして独立。医療機関や医療従事者への取材を中心に、医療・ヘルスケア分野の記事や書籍の執筆を手がける。
透析治療について、
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透析治療には、患者さまそれぞれのご事情に合わせたサポート体制が欠かせません。 戸田中央メディカルケアグループでは、旅行・帰省時の臨時透析や、入院治療への対応、また総合病院との連携による多面的な医療サポートを提供しています。
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